ライフサイクル分析:紙とプラスチック緩衝材の比較

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紙の梱包材は、持続可能性やリサイクル率の高さの観点から、最終消費者にとって魅力的な資材です。2019年のある調査によると、最も持続可能な梱包材として紙を挙げた人は消費者の55%に達しており、市場において紙による梱包がポジティブに捉えられていることが、この結果からもわかります。より優れた顧客体験を提供し、ビジネス面での成果につなげるために紙の梱包材を採用することは理にかなっていますが、同時に、持続可能性に関する様々な指標において、紙とプラスチックの梱包材の性能を比較・精査することもきわめて重要となっています。こうした理由から、Ranpakでは2023年に、当社製品の実際の持続可能性と、プラスチック梱包材との違いについて理解を深めるため、ピアレビュー付きライフサイクルアセスメント(LCA)を依頼しました。

 

ピアレビュー付きライフサイクルアセスメント(LCA)とは何か?

企業は、正しい情報に基づいた経営判断のため、そして製品を改善するために、ライフサイクルアセスメントを活用して、主要な持続可能性指標において自社ソリューションが他社とどのように異なるのか、包括的に把握しようとします。LCAの結果は、その後報告書としてまとめられ、さまざまなソリューションの精査や他の製品との比較評価ができるようになります。

「ピアレビュー付き」のLCAの場合、独立した科学者達で構成されるチームが分析内容や手法、データ結果やその正確性のレビューを行います。したがって、ピアレビューを伴わないLCAの場合、製品の環境への一般的な影響の把握には役立つと考えられる一方で、一般的にそうしたLCAは、企業がビジネス目標を検証する目的で社内で作成するものであるため、バイアスが生じるおそれがあります。よって、公平で適格な第三者が分析結果について意見を提供するピアレビュー付きLCAこそが、最高水準のアセスメントと言えます。  

今回、サステナビリティプラットフォームのプロバイダーでLCAサービスを提供するTrayak社が、Ranpakのすき間埋めおよびラッピング用の紙の保護緩衝材と、一般的なプラスチック製保護緩衝材を、「ゆりかごから墓場まで」のライフサイクル分析を行いました。この分析では、原材料の抽出から、調達・製品製造、平均的な輸送、使用、そして使用後の最終の行き先(リサイクル施設、焼却施設、埋め立て地など)に至るまで、これらの製品の製造に関連するすべてのステップが分析対象となります。

この分析は、製造施設の「ゲート」から製品が出荷されるまでを評価する「ゆりかごからゲートまで」の分析とは異なります。「ゆりかごからゲートまで」の分析では、「ゆりかごから墓場まで」分析とは対照的に、施設からの輸送、消費者による使用、使用後の処分方法は対象外です。使用後の状況を考慮に入れないのであれば、結局のところ、その製品が環境に及ぼす影響の半分しか把握できず、リサイクルの可能性といった循環性の重要な側面を無視することになってしまいます。

今回のLCAの報告書では、欧州および米国地域向けの紙、低密度ポリエチレン(LDPE)、ならびに高密度ポリエチレン(HDPE)を材料とするすき間埋め製品と、紙、LDPEならびにポリプロピレン(PP)製のラッピング製品についての比較結果がまとめられており、ピアレビューを受けました。

 

米国市場 — すき間埋め資材のライフサイクルの比較:紙 VS プラスチック

今回のライフサイクルアセスメントでは、再生可能な資源を原料とし、よりリサイクルしやすい紙の緩衝材の方が、プラスチックよりも持続可能性に優れた材料であることを示す具体的な根拠が、明らかになりました。

Ranpakが開発したFillPak Trident™コンバータは、優れた保護性能にもかかわらず、材料効率の最大化も実現可能な紙のすき間埋めシステムです。Tridentのプレミアムクラフト紙40#と、おそらく大半の消費者がEコマース包装で受け取った経験がある、10x20cm(8×4インチ)のLDPE製エアバッグ緩衝材とのLCA結果をImage 1に示します。

化石燃料使用量:Trident紙緩衝材と比較すると、エアバッグ緩衝材は化石燃料を143%も多く使用しており、Tridentの紙緩衝材方が持続可能なオプションと言えます。

温室効果ガス(GHG)排出量:プラスチックは、化石燃料から製造されているにも関わらず、GHG排出量がより少ない材料として宣伝されることが少なくありません。しかし、プラスチックの方が紙資材よりもGHG排出量が多いことが見て取れます。

炭素吸収量を考慮に入れたGHG排出量(紙の原材料となる木が成長する段階での二酸化炭素吸収を考慮):炭素吸収量、いわばこれらの製品で用いられる材料内に蓄えられる炭素の影響を考慮すると、Tridentの紙緩衝材ではGHG排出量が61%少なくなる一方、プラスチック製エアバッグからの排出量にはほとんど変化がありませんでした。

水の使用量:さらに、プラスチックがその価値の正当性を示すことができると考えられているこの分野においても、紙は、埋立地に大量のプラスチックを蓄積したり、環境中にマイクロプラスチックを放出したりすることがないため、一般的なプラスチックと同様に環境効率が良いことが、ここでも証明されています。

リサイクルの可能性:プラスチック製エアバッグと比べて紙緩衝材の真価が発揮されるのが、そのリサイクル性の高さです。FillPak Tridentの紙緩衝材のリサイクルの可能性は、80.74%に達しています。4.54%はエネルギー再生利用(焼却)に回され、14.72%が埋め立てられます。対照的に、エアバッグ緩衝材のリサイクルの可能性はわずか6.88%で、エネルギー再生利用率は18.25%で、残りの74.87%は埋め立てられます。このことから、紙製品が循環性に優れているのに対し、多くののプラスチックが直線的なライフサイクルであり、きわめて対照的であることがわかります。

まとめ:

  • プラスチックフィルムはGHG排出量や水の使用量が少ないため、紙と比べた場合に環境へのマイナスの影響が相殺されるという意見がありますが、それらの領域においてもRanpakのTrident用の紙緩衝材がプラスチックと遜色ない結果を示していることから、疑問視されるでしょう。
  • 紙がプラスチックよりも確実に優れている点は、循環性にあります。紙は、非常にリサイクル率が高い材料です。プレミアムクラフト紙のリサイクルの可能性が約81%であるのに対し、LDPEのプラスチックフィルムでは、埋め立て処理の可能性がきわめて高く、75%に達しています。

 

米国市場 — ラッピング資材のライフサイクルの比較:紙 VS プラスチック

RanpakのラッピングソリューションのGeami紙は、100%再生可能な資源から作られており、製品をラッピングする際、プラスチック製の気泡緩衝材の代替品として使用します。今回、Geami DC プレミアムクラフト紙 (80g/50#)と小型気泡タイプのLDPE気泡緩衝材についてLCAによる性能比較を行いました。さまざまな持続可能性指標の分野で、紙緩衝材の方がプラスチック資材よりも優れているという結果が出ました。その結果をImage 2に示します。

化石燃料使用量:Geamiの紙緩衝材と比べると、プラスチック製気泡緩衝材の化石燃料使用量は約408%高くなります。

GHG排出量:「ゆりかごから墓場まで」のライフサイクルにおけるプラスチック製気泡緩衝材のGHG排出量は、紙緩衝材を107%上回ります。

炭素吸収量を考慮に入れたGHG排出量:紙の原材料となる木が成長する段階での二酸化炭素吸収を考慮に入れた場合、プレミアムクラフトのGeami紙はさらに優れた力を発揮します。炭素吸収量を考慮する前と比べると、GHG排出量は約3分の1少なくなります。一方、気泡緩衝材では、考慮前と考慮後の排出量はほぼ同じです。

水の使用量:気泡緩衝材の水の消費量は紙資材に比べ289%も多く、プラスチックは紙資材よりもはるかに多くの水を使用することがわかります。

リサイクルの可能性:他の紙製品同様、Geami紙もリサイクルの可能性は79.61%と高く、埋め立ては15.65%です。対照的に気泡緩衝材では、この数字が実質的に逆転しています。気泡緩衝材の場合、リサイクルの可能性はわずか7.18%で、埋め立てが74.63%に上ります。さらに、焼却の可能性はGeami紙の約4倍となっており、循環性の観点からもGeami紙の方が優れた選択肢になることは明らかです。

まとめ:

  • Geami紙は、GHG排出に関する主要な分野において、一般的な気泡緩衝材よりも優れた性能を示しました。化石燃料の使用量に関しては、プラスチック製包装の原料は化石燃料であることを考えると、Geami紙と気泡緩衝材の差が408%と大きくなっていることは理解しやすい結果です。
  • サイクル性という点では、Geami紙はプラスチック製の気泡緩衝材とは対照的であり、一般的に埋め立てではなくリサイクルされています。今回は考慮されていませんが、Geami紙は埋め立てられた場合でも生分解し、自然に還ります。この点においても、時間の経過とともに、環境に有害なマイクロプラスチックになってしまう一般的なプラスチックとは異なります。
  • さらに気泡緩衝材は、リサイクルの可能性がきわめて低く、Geamiと比べると焼却処分される可能性が高くなっています。

 

EU市場 — プラスチック資材のリサイクルの影響

欧州では、プラスチックのリサイクルはより一般的になっており、米国ではほとんどリサイクルされていないLDPEのようなプラスチックフィルム材でも、リサイクルされているケースがあります。しかしながら、これは全体像の一面に過ぎません。プラスチック製緩衝材は、残念ながら、ラッピング用途でもすき間埋め用途でも焼却処分されることが多く、今回の分析対象の大半において、約30%が焼却処分されています。

EU市場における、Tridentのプレミアムクラフト紙 70g/#45のすき間埋め資材と、大半の消費者がEコマース用包装で受け取ったことがあるであろう、10x20cm(8×4インチ)の LDPE製エアバッグ緩衝材との結果を、Image 3に示します。

FillPak製品は全般的に83%という優れたリサイクルポテンシャルを誇りますが、ヨーロッパではLDPEフィルムのリサイクルの可能性が米国よりもはるかに高く、約41%です。

また、Geami DC プレミアムクラフト紙 (80g/50#)と小型気泡タイプのLDPE気泡緩衝材のリサイクルの可能性は、いずれも米国より高い数字となっています。詳しくは、Image 4をご覧ください。

EUの再生材料含有率に関する規制により、EU圏内では現在プラスチック製品の多くが一定の割合の再生材料を含有しています。ただし、PIR(ポストインダストリアル廃棄物)とPCR(ポストコンシューマー廃棄物)のリサイクルには大きな違いがあります。ポストインダストリアル廃棄物とは、通常、製造工程で発生する残材であり、強度が高く、基本的に未使用材料であるため、最小限の再加工で他の製品作りに使用できます。対照的にポストコンシューマー廃棄物は、消費者に届けられた後で、製品が寿命に達するまで使用された廃棄物です。本ブログ記事で検証したRanpak製品は未使用材料(プレミアムクラフト紙)で作られていますが、Ranpakでは、ご家庭から、あるいは道端の回収ボックスからのポストコンシューマー廃棄物を再生した材料を含む製品も幅広く取り揃えています。

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